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いきものがかりが放牧されたので、過去に書いた記事を加筆訂正してお届けする、言わばニューレコーディングベストアルバム的な。

2016年末の紅白歌合戦(ウタガッセンって、考えてみるとすごいネーミングだな)で、あの名曲『SAKURA』を披露して、改めて「いきものがかりってスゲーな」と思わせた3人。

そこから5日後にまさかの「放牧宣言」とは。

いきものがかり OFFICIAL WEB SITE

びっくりしましたが、ニュースで流れた、いきものがかりの地元・厚木の皆さんの驚きと、驚いている人々の老若男女ぶりに私が驚いたという二重の驚きで萌えに包まれ......てはいないんだけれども。

まあでも「チームいきものがかり」が決めたことなので、戻ってきたときは、新たなおみやげを抱えてきてくれると思います。

さて、いきものがかりについては私もいくつか記事を書いたことがあるのですが、スポーツ観戦バカ炸裂で、NHKロンドンオリンピック中継イメージソングであった『風が吹いている』についての過去記事(初回掲載は別サイト)を加筆訂正して掲載します。

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いろいろな世代や層に届く曲

 2012年、NHKロンドンオリンピックパラリンピック放送テーマソングになった、いきものがかりの『風が吹いている』。

毎日テレビラジオから流れたので、普段いきものがかりを聴かない層もこの曲はきっと耳に残っているんじゃないでしょうか。

若者をターゲットとするJ-POPを聴かない層の耳にも届く、というのはいきものがかりの特徴でもありますね。

NHK全国学校音楽コンクール中学生の部課題曲になった『YELL』(2009年9月リリース)、朝ドラ『ゲゲゲの女房』主題歌になった『ありがとう』(2010年5月リリース)と、全国のいろいろな世代に認知されるような曲も多く手がけています。

バイルにイヤホンで個々の好みの音楽を聴く時代に、異なった年齢層が共通の話題としてひとつの曲やグループを語れるというのは希少であり、それがいきものがかりの魅力です。

 

 いきものがかり史上最長の7分44秒

 『風が吹いている』は、本曲とインストのみだったので、CD版610円、配信500円というエコノミーなお値段でした。

「610円」って、ロンドン→ロ(6)ンド(10)ン→610で610円だとか。

く、苦しい......

しかし、嫌いじゃない。

「みなさん、こんにつあー!!2015」というツアー名や、「バラー丼」というベストアルバムの命名センスなど、かなり好きではあります。

遊び心満載な、無邪気ないきものがかりがチョクで感じられます。

この曲は演奏時間がなんと7分44秒!

ビートルズの「ヘイ・ジュード」が7分11秒ですから、それよりも30秒ちょっとも長い。

でも、THE 虎舞竜の「ロード」の15分31秒よりは半分ぐらい短い。

なんでこの2曲と比べるのかは、私自身もわかんないんですけれど。

Hey Jude

Hey Jude

 

今回のリオオリンピックの安室奈美恵さんの曲もそうだと思うんですが、「長い」とか、「ラ〜」の部分が入るっていうのは、恐らく各中継終わりや総集編のBGMとして使いやすいってこともあるでしょうね。

 

7分44秒という渾身の力作について、メンバーで作詞作曲者の水野良樹さんは2012年6月27日のTwitterでこうツイートしています。

「風が吹いている」の取材がぼちらぼちら始まっていて、そのたびに「水野がつくってきたデモがあつくるしいほど気合が入ってた」とメンバーが言ってくれるので、気を良くして久しぶりに聴いてみたけど、あつくるしさがひどくて、もはやくどくて、ほんと吉岡さん歌ってくれてありがとうって思った。

爆笑。

いやこれは謙遜だと思いますが、それくらい気合を入れて作ったってことなんでしょう。

そりゃそうでしょうよ、だってオリンピック・パラリンピックだもの。

しかもNHKの放送用テーマソングなんて、気合入るわな。

それを吉岡聖恵さんがピュアなボーカルで歌いこなすことで、私たち聞き手側に、肩肘張らない自然な感じで入ってくる作品になっているんですよねー。

うーん、絶妙なメンバー内バランス!

 

遠ざかることで「風」が「時代」を構築する

 水野さんは『風が吹いている』リリース時、「オリンピックのような国際イベントのとき、国内では『ひとつになろう』と言われるが、現実はみな同じ方向を向いているわけではない」と言っています。

 

togetter.com

 

それぞれがそれぞれに生きている。連帯を感じられる人もいれば、連帯から疎外されていると思う人、あるいは連帯を壊したいと思う人。連帯の存在そのものを感じない人もいる。バラバラである人々が、でも同じ時代に生きている。

そして、ただ、そこに風が吹いている。

 

追い風や向かい風などいろいろな「風」が吹き、人それぞれで「風」の意義は違うが、「風」は確かに吹いていると水野さんは言います。

そしてさらにツイートが。

そして、それらの一連の総てが、いつか、振り返ったときにあらためてはっきりと”時代”と呼ばれる。
いつか僕も、僕らも、僕らではない誰かも、この今を生きる人々すべてと、彼らが生きたことのそのすべてが、やがて”時代”と呼ばれる。

『風が吹いている』って、こんなメッセージが込められていたんですね。

オリンピックやパラリンピックの映像を観ながらこの曲を聴いていたあの頃は、選手を後押しする「風」であったり、悔し涙を流す選手を包み込む「風」であったり、そんなふうに感じました。

でも、もう1回オリンピックも過ぎ去って、いよいよTOKYO2020に向かい始め、ロンドン五輪の頃から遠ざかった今、もちろん選手や関係者の努力や記録は胸に刻まれていますが、そのこととはまた違った、「観ていた方の私たちに吹く風」の存在を、今更ながらこの歌によって気付かされるんですよね。

選手や関係者に吹く「風」も、私たち観ている側、あるいはオリンピック・パラリンピックに全然興味のない人たちに吹く「風」もある。

風の吹く方向が違っていても、同じ時に吹いていた「風」なのだ。

そしてそれがもっと遠ざかると、ひとつの「時代」として浮かび上がってくる。

水野さんは言っているんだと思います。

そう考えると、CDジャケットが、2012年にはすでに完成し営業も始まっていた東京スカイツリーではなく東京タワーだというのが、時代の象徴だったという意味で、すごくよくわかります。


絶妙なバランスのチーム

 『風が吹いている』は、2013年7月にリリースされた6作目のオリジナルアルバム『I』(アイ)にも収録されています。

『風が吹いている』リリースから、ほぼ1年後です。

ウェブサイト「音楽ナタリー」で「いきものがかり ニューアルバム『I』全曲解説」というスペシャル企画があり、3人が『風が吹いている』について語っています。

 

natalie.mu


まず、吉岡聖恵さん。

これからも大きな曲として大事に歌っていきたいですね。

歌唱同様、とてもピュアな意見です。だから私たちに伝わってくるんですよね。

 

そして山下穂尊さん。

オリンピックっていう部分で自分たちの手の離れたところで広がって社会現象に結びついていったなって客観的に見て思いましたね。ありがたい育ち方をしてくれたなって。

さすが、冷静です。

懐が深く、いろんな感情を許容するアーティスト肌ですね。

 

水野さんはどうでしょうか。

あの瞬間だから作れたっていうのはあって、もう作れないですね(笑)。そのときしかつくれないものってあるじゃないですか。当時は29歳かな。30歳になる直前で、20代のチャンスだって思いながら作ってました。

やはり、そのときの「風」を感じていますね。

すごくいいバランスが保たれたグループだなあって思います。
『風が吹いている』という曲自体も、ピアノやギターのアコースティックな音が聖恵さんのボーカルにマッチしているし、厚いサウンド、特にリズムがグングンからだに響き入って、ピュアな部分と力強さがうまく混ざり合って、いきものがかりというグループにピッタリの、絶妙のバランスです。

この3人だからこそできる、みんなから愛されるJ-POP。

『風が吹いている』は、そのバランス感覚の中で生まれ、時代の風に育てられ、今後も成長していく曲であり、充電期間を終えた水野さん、聖恵さん、山下さんが、それぞれ持ち帰ったものをポケットの中から出して、絶妙なバランスでひとつのものに作り上げていくまで、楽しみに待っていようと思います。

 

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